立体感を出すためには丸いものを描くと良いが、同じ丸みを帯びたものでも、人の顔は難しい。
頬骨があったりしていびつになっているからだ。
しかも木を描くときとは違って、茶色系統だけというわけには行かない。
肌色を出すときに、桃色と薄茶色を重ね塗りしてようやく肌色に近いものが出せるのだから、端の方を濃く塗るにしても、茶色だけというわけには行かない。
そんなことをしたら、人の肌色からはかけ離れてしまう。
だから立体感を出すにしても、色を重ね塗りしなくてはそれらしくはならない。
だがそれ以上に難しいのが表情だ。
親友の長男の写真が私のパソコンには沢山入っている。
それをプリントアウトして、それを見ながら描き始めたのだが、似ても似つかないものになった。
そこで写真と絵とを見比べてみると思いのほか目と目の間は開いている。
鼻は思ったよりもずっと短い。
それらを踏まえて顔を描くと、何とか顔らしくはなったが、それでも写真とは別人だ。
それは親友がアマチュアカメラマンだということにも起因している。
親友の持っているカメラ機材は、プロカメラマンと同じくらいにレベルの高いもので、数も売るほど持っている。
それくらいだから、写真の構図にしても、素人離れしている。
つまりお澄し顔は殆ど無く、なにかの表情を捉えているのだ。
親友の長男は目鼻だちの整った子で、お澄し顔だとハンサムなのだが、親友のくれた写真には様々な表情が写っている。
その表情まで描こうとするとこれが難しい。
でも・・・・・
そのおかげで、人の顔のパーツがよく分かるようになった。
目は、それまでは私は楕円の組み合わせで描いていたが、良く見ると上瞼も下瞼も楕円ではない。
クロソイド曲線だった。
クロソイドというのは渦巻きだ。
余談になるが、日本最初の高速道路、名神高速道路は、直線と円とで作られた。
所が事故が多発したために、人間工学に基づいたクロソイド曲線の組み合わせで、東名高速道路が作られた。
円と直線の場合だと、コーナーの入り口で、ハンドルをすぐに円に合わせなくてはならないが、クロソイド曲線なら、ゆっくりとハンドルを切り始めても間に合う。つまり運転がしやすいのだ。
考えてみると、自然界に、円や楕円や直線のものはまずない。
あるのはクロソイド曲線の組み合わせだ。
瞼の形も、渦巻きの組み合わせでできている。
瞼ばかりではない。
身体のラインも、顔の輪郭も、鼻の形も、クロソイド曲線の組み合わせだ。
その事がわかってからは、私の絵は急速に上達した・・・・・・といいたいところだが、頭でわかっている事と、実際に出来る事とは違う。
けれども、とにもかくにも、表情を理解できるようにはなった。
こうして、人間の表情が判るようになってくると、動物にも表情を付けられるようになった。
すると、楽しいことを思いついた。